愛犬みるくとの散歩での会話(?)を思い出して書いた、6年前のブログ投稿記事。
夕方の散歩。
ひとりでは面白くなくて、相棒のことを思い出す。
「とうちゃん」
「ん?」
「あついな」
「うん、暑いな」
「そろそろ かえろ」
「そやな、向こうの電柱にでんして帰ろか」
「わかった」
「ほな行こか」
「しゃしん とったん?」
「うん、今日はもうええねん」
「そうなん」
いつもこんな感じでした。
2014年8月29日
愛犬みるくとの散歩での会話(?)を思い出して書いた、6年前のブログ投稿記事。
夕方の散歩。
ひとりでは面白くなくて、相棒のことを思い出す。
「とうちゃん」
「ん?」
「あついな」
「うん、暑いな」
「そろそろ かえろ」
「そやな、向こうの電柱にでんして帰ろか」
「わかった」
「ほな行こか」
「しゃしん とったん?」
「うん、今日はもうええねん」
「そうなん」
いつもこんな感じでした。
2014年8月29日
2011年6月1日 15:37 に 「monochrome・syndrome(モノクロームシンドローム)/BIGLOBEウェブリブログ」へ投稿した記事を転載しました。
80年代前半に少年チャンピオンに連載されていた「気分はグルービー」というマンガをご存知だろうか。
実力派高校生バンド、ピテカントロプスエレクトスのメンバーたちが繰り広げる、ちょっとこっ恥ずかしい表現だけれど「青春コメディ」で、ロックバンドものの先駆である。
作者は、佐藤宏之氏。
就職が決まり、大学の卒業研究が佳境に入った頃だった。
まさかの大きな失恋をして、心に大きな穴が空いてしまった僕は、毎日癒しを求めてフラフラしていた。
その頃、「すくらっぷ・ブック」(だったと思う)という連載マンガを読むために買っていた少年チャンピオンで、このマンガの連載が始まった。
また恋愛ものかい、などと云いながら、ヒロインの寿子嬢が可愛かったので、ハマってしまった。
ターゲットの読者層は15歳位だと思うので、僕は少しヒネた読者だったのだけれど、その後2年ほど「気分はグルービー」のためだけにチャンピオンを買い続けた。
好きなマンガだったので、単行本も全巻を揃えていたけれど、阪神淡路大震災で壊れた実家を解体した時に処分してしまったらしく、長らく読み返すこともなかった。
が、先日20年ぶりくらいに、あらためてコミックス全13巻を入手し、読む機会を得た。
主人公は、ドラムスの憲二でヒロインがキーボードの寿子。
他のバンドメンバーは、リーダーでベースの大将、ギターの稲村、そしてボーカルの奥田。
憲二が寿子に誘われてピテカンに加入した高1の時からバンド解散までのふたりの恋を軸に、コンテストの全国優勝を目指す硬派なロックバンドとしての側面、メンバーの恋愛や学園生活、家を出てアパート暮らしをしている寿子の家族間の問題などを描いている。
これらに加えて、一話完結のドタバタギャグ展開の話もけっこう多いが、後半は進路問題に直面し、シリアスな話が多くなる。
卒業、ピテカン解散は既定の結末とはいえ、憲二が、漠然と希望していた大学進学とプロのミュージシャンへの道のどちらを選ぶか迷い悩んで決断し、新たな道へ踏み出すまでを描いた最終二十話あまりの構成と展開は巧みで、読み応えがあった。
ラスト数話、ピテカン解散コンサート半ばで”A Part of Your Life”を歌う憲二と寿子に、別れの場面がオーバーラップするクライマックスは、切ない。
僕も歳をくったし、もう少し大人の目で読めるかと思ったのだが、今回全巻を読み通してみると、昔読んだ時と変わらず、やっぱり切なさの残るラストに変わりはなかった。
さて !!!
じつは、僕はこの「気分はグルービー」について、20数年ずーっと気になっていることがある。
このマンガを知らない人には、申しわけないけれど、ここからが、今日の本題なのだ。
気になっていることとは、主人公の憲二と寿子のその後である。
寿子は、憲二と同じ大学に進学してずっと一緒に居たかったのだけれど、プロのドラマーを目指す憲二の決意を変えさせることはできなかった。
憲二は、ブルースシンガーの本間のおっちゃん、稲村と組んでバンドマンになるため、ふたりは涙の別れとなったのである。
その時、憲二と寿子は、再会の約束を交わしている。
最後の抱擁の後、「また会えるよね!? 会えるでしょ!?」と 寿子が憲二に尋ねる。
「ああ、いつかきっとな」そう約束して、憲二は走り出す。
そして、「わたし、待ってるからね! あなたが迎えにきてくれるの!」
「憲二!! わたし、待ってる!!」
と彼の背中に向かって叫ぶ寿子を振り返らず、「おう!」とだけ応え、走り去っていくのだ。
単行本の13巻(最終巻)の表紙カバーには、登場人物たちの何年後かの姿のイラストが描かれている。
そこに描かれた寿子は、おなかの大きな妊婦で、姉の恵利さんとにこやかに言葉を交わして幸せそうである。
近いうちに生まれそうな感じだ。
寿子が幸せでよかった、とまずは安心する。
あの別れの時の約束が守られたのだ、と。
そう、ふつうに考えれば、これが妥当なふたりの将来だ。
が、すぐに、不思議な光景に気付く。
寿子の後ろに立っている憲二の様子が変なのだ。
腕組みして、不機嫌そうにそっぽを向いている。
そして、後ろから憲二の右肩に手を置き、「大丈夫?」という表情で彼に話し掛けているのは、大将の妹、麻美である。
これは、いったい何を意味するのだろう。
手前の方にひげ面をした稲村と、ウィスキーのスキットルのようなものを持ち、座り込んでとろんとした目付きの本間のおっちゃんがいる。
彼らの格好を見ていると、よくない想像が頭をめぐるのである。
憲二と稲村とおっちゃんの3人は、ミュージシャンとして全然成功していないのではないか、と。
憲二と麻美の会話が、
「ケンちゃん、だいじょーぶ? ヒサコと子ども養っていけるの?」
「よけーなお世話だ、ボケ!」
くらいならいいのだが。
なんとなく、考えたくない想像が頭の中をめぐるのだ。
手前側、寿子の隣で恵利さんの子どもにあっかんべーをしている男、大将が、ひょっとして寿子のパートナーになっているのではないか、という疑惑である。
寿子のおなかの子の父親は、大将なのか!?
この絵を眺めていると、充分に想像できそうなのだ。
浮草暮らしのバンドマンの憲二と、早稲田を出て裁判官?(になると本人は言っていた)になった大将とでは、現実的に考えれば、どちらを選ぶかは比べるべくもない。
もちろん、まず愛情があっての話だけれど、寿子も大将も大学時代を同じ東京で過ごしているし、もともとバンド仲間としてつきあいは長い。
いつのまにか自然に気持が通い合ったっておかしくない。
いつになったら自分を迎えに来るかわからない憲二より、いつも傍にいて、しかも生活力のある男と結婚しても何も悪くないし罪でもない。
大人になれば、愛だけで100%、ではやっていけなくなるのだ。
寿子の元ライバルだったお蝶さんは、彼女のことを「番だった」「とびきりトッポかった」と語っている。
が、そんな元スケ番寿子も、将来なんになんの?と憲二に尋ねられた時
「だれかのお嫁さん」
と可愛いことを言っている。
寿子は、プロになることなど考えていなかった。
大学へ進学することが堅実な将来に繋がると考えていたのかもしれない。
わりと現実的、保守的なのだ。
そして、憲二とふたりで同じ大学へ進学していつも一緒に居たい、という思いが一番強かったのだと思う。
憲二にもそうあってほしいと願い、まるで教育ママみたいに口うるさく勉強しろと言い続けた。
憲二の心の中では、寿子と一緒に居たいとは思っていても、それを大学進学へのモチベーションにできなかった。
プロになるという気持ちがはっきりしてくるにつれ、寿子の考えとの溝も広がっていった。
で、その結果がこのイラストだとしたら、
憲二と麻美の会話は、
「ケンちゃん、だいじょーぶ? 兄貴にヒサコとられちゃったね。」
「よけーなお世話だ、ボケ!」
かもしれないのだ。
もっと勘ぐれば、憲二は麻美と一緒になっていて
「ケンちゃん、ひょっとして、まだヒサコに未練あるんじゃない?」
「んなわけないだろ、ボケ!」
かもしれない。
ピテカンの解散コンサートで憲二と寿子が歌った、あの “A Part of Your Life”
「あなたが決めた道を歩いてゆくわ
あなたにいわれた通りに生きていくわ
あなたの苦しみも分かち合いたいの
あなたの夢もいっしょに見たいの
あなたの人生をいっしょに生きたいの・・・」
途中、寿子は涙で歌えなくなった。
この歌は、プロになるという憲二の決意を受け入れた、寿子の思いそのものだったのだろう。
もし、それがたとえ結果的に若気の至りだったとしても、その時の思いが、色褪せることはないけれど・・。
やはり、憲二と寿子が結ばれていることを願う。
というわけで、
「気分はグルービー」第13巻の表紙カバーのイラストは、憲二と寿子のその後について、僕の脳裏に大きな疑問を残したまま現在に至っている。
作者の佐藤宏之氏は、どのように考え、このイラストを描いたのだろう。
尋ねられるものならば、尋ねてみたいと思うのである。
*今回掲載した写真は、ウェブリブログへの投稿当時のものとは異なります。